§3.水道水
水道水の中には、水道法の水質基準値以下ですが、トリハロメタンやトリクロロエチレン、シマジンなどの有害物質、気になるカビ臭や残留塩素などの「おいしさを阻害する成分」が含まれていることがあります。
水道は、本来水の乏しい地域に遠隔地から水を引き、安定した供給をするためのもので、安全でおいしい水の自然環境に恵まれていた日本では、水道化が本格的に進んだのは第二次大戦後のここ数十年のことです。
高度経済成長の頃、住宅地が都心部から近郊へと広がり始めると、それまでの水源地の近くにも住宅や工場が増え、排水が水源に流れ込むようになり、そこでより高度な浄水処理を施して対処するとともに、より遠くのきれいな水源を求めるようになりました。
しかし農薬汚染、工場からの排水、産業廃棄物にまぎれ込んだ有害物質などにより、その水源まで水質汚染は進み、より遠くに水源を求め、より高度な浄水処理が必要となったのです。
水道水は、まず浄水場に水を溜めて、砂などの不純物を沈殿させ、その後、濾過処理して、より細かい不純物を取り除き、塩素を入れて雑菌などを死滅させるという処理を施しています。日本では、水道法で残留塩素の一定値が定められています。
(水道水1リットル中0.1ミリグラム以上の含有量)
その塩素によって有害な細菌を完全に死滅させるためです。
しかし、この塩素が水道水の味を損ねる原因になっています。一般に水道水は、特有のカルキ臭がしますが、これは塩素自体の臭いではなく、塩素が細菌と反応することによってカルキ臭が発生してしまうのです。細菌が多ければ多いほど多量の塩素を必要とし、カルキ臭も強くなります。つまり水道のカルキ臭が強い地域は、それだけ水源の汚染がひどいとも言えます。
さらに、塩素は大きな問題を引き起こすことが指摘されています。水の中の有機物と塩素が化学反応を起こすと、トリハロメタンという物質をつくりだします。このトリハロメタンを人が大量に摂取すると、中枢機能低下、肝臓障害、腎臓障害などを起こし、さらには催奇形性、発ガン性までもがあり、痴呆、イライラ、疲労、無気力の原因にもなると言われています。
それでも水道水の中に、O157など人体に直接影響を及ぼす細菌がいるため、現在できうる最も安価で効果的な殺菌方法は塩素処理なのです。塩素を減らすためには、まず水源をきれいにして細菌の量を減らすしかないのです。最近では、オゾンや活性炭を使った高度浄水処理により、カルキ臭やかび臭を取り除いた、おいしい水もつくられるようになりました。
- ・総トリハロメタン
- 水道水のトリハロメタンは消毒に用いる塩素と原水中の有機物が反応して生成したものです。元となる有機物は、植物のセルロースなどが酸化される過程で生じるフミン質(腐植質)であることが多く、に湖沼水を原水とした場合は植物プランクトンが大部分を占めることが知られています。
トリハロメタンは、メタンを構成する4つの水素原子の3つが塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン化合物に置換されたものです。 水道水質基準では、その中でクロロホルム(CHCl3)、ブロモジクロロメタン(CHBrCl2)、ジブロモクロロメタン(CHBr2Cl)、 ブロモホルム(CHBr3)の4物質を対象としており、これらを総トリハロメタンと総称します。
- ・トリクロロエチレン(有機溶剤)
- 機塩素化合物の1種で、無色透明の液体で、主な用途としては、金属機械部品等の脱油洗浄、ドライクリーニング、 香料等の抽出、染料の溶剤等があります。人体への影響としては、肝障害、腎障害、中枢神経障害が知られています。 また、廃液等による地下水汚染の進行が懸念されています。
- ・シマジン(農薬)
- 農薬で白色の固体をしていて、野菜、果樹、芝生に除草剤として用いられます。 散布時期は、春秋の雑草発生前で、安定性が高い分、残留性が高くなっています。 雨などによって地下水に混じり、水道の原水に混入することがあります。
- ・カビ臭
- カビ臭の原因は『2メチルイソボルネオール(2-MIB)』と呼ばれる物質で、湖沼や河川に繁殖する藍藻類のある種のものや放線菌により作られます。 かび臭発生時の水温は20〜30℃の場合が多く、時には10〜15℃で発生することもあります。快適水質項目の目標値は、粉末活性炭処理の場合「0.02μg/リットル以下」、粒状活性炭処理の場合「0.01μg/リットル以下」とされています。
- ・残留塩素
- 殺菌のため浄水場で添加される塩素剤によって『カルキ臭』が引き起こされます。 残留塩素は、塩素処理によって水中に残留している有効塩素のことです。塩素の主な用途は、工業用及び家庭用の殺菌・消毒剤と漂白剤で、 水道水及びプール水の消毒や食品工業における殺菌・脱臭にも使用されています。
わが国では水道法により、水道水の消毒を行い給水栓で残留塩素を保持することが義務づけられています。
水道法施行規則では給水栓における水が遊離残留塩素を0.1mg/リットル(結合残留塩素の場合は0.4mg/リットル)以上、 病原生物による汚染のおそれがある場合は0.2mg/リットル(結合残留塩素は1.5mg/リットル)以上保持するように 塩素消毒をすることが義務づけられています。快適水質項目の目標値は「1mg/リットル以下」とされています。
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